夏を制する者は受験を制する。昔からよく言われているが、自身の受験時代を回顧してみても、確かに第一志望に合格した人たちはそうであったと思う。夏は受験本番まで少々時間があるため、一年間の中で比較的精神的にも余裕があり、学習時間も作りやすい時期である。この夏の過ごし方が受験生の天と地を分ける決戦となるのだ。
夏は一学期に学習した基礎・基本~標準的な問題の地固めを行うのが最善の策である。さらに一部負荷をかけるようなやや難しい問題にも挑戦し、学習の進捗度合いを確認することも重要である。特に理系であれば英数の主要科目に主眼を置き、真の学力(=二次学力)を養うトレーニングをしなければならない。一学期は英数に時間をしっかりと割いてきたはずであるから、その地固めを行うのである。理科に関しても、二学期以降から飛躍的な学力向上を目指すために、基礎・基本を徹底的に見つめ直し、秋から本番レベルの問題にチャレンジできるように準備をしなくてはならない。
夏休みは基本的に毎日が休みであるから、いかに最低12時間、できれば15時間程度の学習時間を確保するのかを考えなければならない。「そんなにできるわけないじゃないか」ではなく、事実として難関大や医学部に合格した人はそれくらいやっているのだから、それに合わせて「自分の普通」も高めていかなければならない。常にどんな瞬間でも、思わず夢に出てきてしまうくらいに学習に没頭する必要がある。
残念ながら来年不合格になる受験生の特徴として、上記の反対の行為、すなわち夏に集中できず、それを秋までダラダラと引きずってしまう人がいる。これは最悪のパターンである。合格する受験生、特に現役生は夏に必死に猛勉強をしてくるわけで、こうして夏に一度できてしまった大きな差を秋以降に埋めるのは極めて困難である。夏以降に夏休み同様まとまった時間を確保するのは難しいからである。この失敗パターンは浪人生に多く注意が必要である。なぜならば、たいてい5月6月に各予備校の第一回の模擬試験があるが、一般的な事実として、第一回の模擬試験は浪人生が圧倒的に有利であり、本来浪人生が有している偏差値よりも5以上高く数値として出てしまうことが多々あるからである。その数値に大喜びして、「今年はすごいぞ!自分はもう勉強しなくても合格できるぞ!」と思い込む浪人生が例年多数いるからである。
ここでワンポイントのアドバイスがある。実際に夏休みを迎える前に一度自分の「武器科目」と「苦手科目」が、主観的評価と客観的評価とでどの程度乖離しているのかを冷静に分析し、そのギャップを埋めるべく学習方針を立ててほしい。多くの受験生を見ていると、My偏差値と実際の難関大・医学部の全国偏差値が乖離しているのをよく見かける。これは模擬試験で出てくる単純なデータとしての数値(偏差値)と必ずしもイコールにならないのも曲者である。そういう点でやはり信頼できる進路進学指導員に的確なアドバイスをもらい、受験全体をマネジメントしてくれる羅針盤となってもらうのが良いと思う。定期的に「全国の普通」と「自分の普通」のギャップを客観的に評価してもらうことは重要なのである。努力の方向性の正しさと、実際の対戦相手との距離感を見つめる機会を得るのである。
繰り返す。夏を制する者は受験を制する。この黄金律は今も昔もこれからも変わらぬ真実である。ゆえに、受験生諸君、この夏をどう過ごすのか、今一度考えてみてほしい。