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6/26/2021 1:15:00

Case10.たまごが買えない

eyecatch
マインド

 今回は、金銭的に恵まれているとは決して言い難い条件下で果敢に大学受験に臨んでいる受験生たちに、少しでも元気と希望を与えたいと思い書いた内容である。「お金がないから僕は私は医学部なんていけないんだ」、そんなことは微塵も思う必要なんてない。そんな君たちへのエールの気持ちで記していく。

 これは私自身の受験生時代の話である。全国の医学部に合格し、現在医師として働いている多くの人たちの受験生時代に比べると、非常に様々なことを経験させてもらったのではないかと思っている。そんな回想録である。

 私は母子家庭で育った。小学校の時からずっとそうであった。大学受験では、某国立大学医学部に合格するも様々な事情で入学を辞退したが、その時に次年度の浪人費用の工面をどうするか、という現実的な問題にぶつかった。浪人は大なり小なり経済的負担を強いられる。予備校や塾に通う場合、学費のみでなく、交通費や食費(例え毎日家から弁当を持って行ったとしても絶対に食費はゼロにならない)など様々な費用がのしかかる。私には姉がいて、姉は当時大学生であり、母親はその学費もあったため、これ以上大きな経済的な負担を強いてはならないという自分の中での思いもあった。ましてや、一度某医学部に受かったにも関わらずそれを辞退するという選択をしたので当然と言えば当然である。

 では、具体的にどうしたのか。結論、アルバイトをせざるを得なかった。ティッシュ配り、ビラ配り、ホテルの荷物搬入などの日雇いバイトから、某学習塾の講師など様々なことをやった。そうして、塾の学費や交通費を捻出した。アルバイトだけでは賄えないので、小学校の頃から貯めていた貯金も全て費やした。今となっては、受験生時代にこんな珍しい経験をさせてもらえて感謝している、という気持ちである。というのも普通の受験生、特に医学部狙いの受験生はまずこんな経験をしないからである。バイトをすると時間的制約が他の受験生よりも強くなるが、その中で「効率的な時間の使い方」「集中するときのモードの入り方」など受験時代のみならず、今でも応用の利くテクニックを習得させてもらった。

 受験生当時、私が一週間に自由に使えるお金はちょうど500円であった。これ以上使わないように財布には500円しか入れないことにしていた。100均のビリビリ財布に500円硬貨が一枚しか無かったが、それでも不思議と全くみじめな思いはしなかった。むしろ500円も使える!というありがたさと嬉しさに満ちていた記憶がある。

 JR琴似駅から当時の医学進学塾(現 北大・医大進学塾)に向かう途中にセブンイレブンがある。セブンイレブンのおでんが好きで、いつもそこでおでんを買ってから塾に行き、それを食べてから自習や授業を受けるということをしていた。おでんはいつも必ず「こんにゃく」であった。それはなぜか。答えは簡単で、こんにゃくが一番安くて一つ70円だったからである。70円×7日間=490円であり、ちょうど一週間500円で足りるのである。しかし、「たまご」は90円程度であり買えなかった。ほぼ毎日そこのセブンイレブンに行くので店員さんにも覚えられ、「いつものこんにゃくあるよ。最後の一個だから寄せておいたんだよ。いつも通りおでんの汁たくさん入れてあげるね。」というような感じであった。容器いっぱいのおでんの汁と噛み応えのあるこんにゃくでお腹を膨らませていたのである。

 こうして苦学生として受験を戦ったわけだが、周りの受験生がコンビニやパン屋などで様々な物を買って食べているのを見て、「ああ、おいしそうだな」と思ったことはあるが、「今頑張れば来年はパンでもおにぎりでも好きな物が買えるぞ!だから今必死に死ぬ気で勉強しよう!」というポジティブな思考になった。あまり悲観的になったり、他人のことを妬んだり、そういう負の感情にならなかった。負の感情からは何も生み出されないということを、受験生当時から心の奥底で理性的に理解しようと努めていたのかもしれない。この点は受験生ながらよく理解していたと自分を褒めたいと思う。(笑)

 ただし、可能であるならば受験生はバイトなどには従事しない方が良いと思う。バイトをしてしまうと体力的にも精神的にも消耗することは間違いないからである。私の当時の学習環境は、やはり全国の医学部受験生の中では稀有だったと今でも思う。しかしながら、バイトなどに従事せざるを得ない人がいるのもまた真実であり、そういった人にも私のようにチャンスは必ずあるのである。

 さて今回のこの話を書いてみて、自分のような境遇、さらにはもっと不利な境遇の受験生にも「あなたも大丈夫だよ、あなたみたいな境遇からでも医学部に入るチャンスはあるんだよ」と心からエールを送りたい。医学部や難関大を狙っているという受験生のみならず、全国の受験生の中には間違いなくもっと厳しい戦いを強いられている人はいるはずである。その人たちに私から伝えられるアドバイスは、とにかく「時間」と「集中力」を最大限意識して取り組むことである。学習の効果とは、「時間」×「集中力」で規定され、つまり、「10時間」×「集中力50%」の場合と「5時間」×「集中力100%」では同じ効果になる、ということである。仕事をしながら勉強せざるを得ない受験生(特に再受験生)などは時間的制約がかなり厳しく、彼ら彼女らの勝利の方程式は「全集中の呼吸」で取り組むことである。いかに本気で勉強するか、その一点で勝敗が決まる。

 今回の話が少しでも苦学生や再受験生の心の支えになってくれれば良いと思う。苦学生や再受験生のあなたにも、本気で勉強すれば医学部に受かるチャンスはいくらでもあり、それを掴み取るか否か、それはあなたの本気度合いが最大の鍵なのである。

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