なぜ医学部は今も昔も偏差値が高いのか。なぜ医学部はずっと倍率の高い学部なのか。
医学部を一瞬でも志したことがある受験生またはその親なら一度はこれらの疑問を多かれ少なかれ抱いたことがあるかもしれない。「医者は人の命を扱うから」「医者は社会的地位が高いから」「医者は給料が高いから」など様々な意見があり、実際どれも私自身の周囲の人から数多く言われてきた意見である。
私の個人的な見解はこの「なぜ医学部は偏差値が高いのか」という疑問に対して「主体的要因」と「受動的要因」の二つが存在すると思う。以下それぞれについて考察する。
まず「主体的要因」について、ここで言う主体的とは、「医師である」という主格によって生じる要因、すなわち、「医学は科学であり、科学は常に進歩する」という前提に起因するものである。我々が身の回りの生活が日々進化し便利になっているという実感からも分かる通り、大なり小なりすべての科学領域は日進月歩している。医学は応用科学に位置し、多くの基礎・応用問わずすべての科学領域とその関係を密にしている。毎日驚くほど大量の論文が投稿され、その度に新たな生命現象が解明されている。それ故に医学を学ぶ医師自身も常に学び続けなくてはならない。自分の専門領域のみならず、ときには非専門領域にも広く興味・関心を持ち、最新の医学・科学に触れる習慣が必要とされる。この「学習習慣」の物差しの一つがいわゆる「偏差値」であると思う。おそらく医学部に受かった学生、さらに医師国家試験に受かった医師は、試験本番だけ「たまたま」点数が高かった人・集団ではなく「恒常的に」点数が高い、すなわち日常的に学習する習慣がある人・集団である。だからこそ医学部に受かり、医師になれると考えることができる。
次に「受動的要因」はどうだろうか。こちらは「医師である自分以外」という周囲の環境的・受動的要因によって生じる。つまり、自分や家族の命を預ける医師には絶対的な信頼を置きたい(=社会的地位)、最新の医学や科学に触れられる(=学問としての面白さ)、人格を持った人体を相手にするという精神的・肉体的負担に見合う一定額の報酬(=金銭的条件)などの周囲から発生する理想や憧れが複合的に絡まり、結果的に医学部の難易度(=入試偏差値)を高めている。多くの受験生や非医療従事者の人間はこちらの要因が最初にパッと思いつくかもしれない。
いずれにせよ、これまでもこれからも医学部入試は高倍率で高難度である。おそらくこの傾向が急激に変化することはない。毎年微妙な変化はしても大勢は変化しない。それが医学部受験なのである。「全国の工学部ならどこでも良いから海を渡ってでもどこか工学部に入るんだ!」という受験生はあまりいないと思うが、「医学部ならどこでも良いから全国を視野に入れるんだ!」という受験生は頻繁に目にする。それだけ全国から受験生がしのぎを削る戦いなのである。
受験生諸君、必死に勉強しよう、そして来年4月から第一志望の医学部で医学を学ぼう。そのために今は正念場、毎日コツコツとやるべきことをやろう。ローマは一日にしてならずの精神で勉強しよう。