『真剣だからこそ、ぶつかる壁がある』これは元男子プロテニスプレイヤーの松岡修造氏が語った言葉である。この言葉の本質は、真剣に取り組むからこそ、結果として自ら次の高い目標を設定し、その過程で壁にぶつかるのは至極当然のことだというものだ。壁にぶつかること自体は悪いことではなく、それを乗り越えようとすることが成長や成功へつながる。
こんな状況を考えてみよう。あなたが友達と遊びでサッカーをしている。サッカー未経験者であるあなたにとってサッカーはただの遊びであり、真剣にやるつもりは全くない。当然まともにボールを蹴れないわけで、試合中に一点もシュートが決まらない。点数が取れなかった課題は山積みだが、あなたは自分が点数をとれなかったことに対して“真剣に”課題意識を持つだろうか。おそらく答えはノーだろう。
しかし同じ状況でも、あなたがもし“真剣に”プロサッカー選手を目指しているならばどうだろうか。点数に直結するシュートそのものへの課題意識だけではなく、シュートに最適な地点に入るまでのドリブルやパス、その他基礎体力などにも課題をもって“真剣に”その課題に取り組むのではないだろうか。
つまり、ある同じ状況に二者が立たされた時、一方は課題(=壁)があっても最終目標が定まっていないため壁を壁と感じる前にその壁から退散し、他方は上昇志向に基づく最終目標があるからこそ壁を壁と認識しそれを必死に乗り越えようと努力する。まさにこの現象を表現したものが『真剣だからこそ、ぶつかる壁がある』という松岡氏からのメッセージなのだ。
人はありとあらゆることに100%、ましてや120%を発揮し続けることは不可能だろう。しかしながら、もし自分が『ここは勝負所だ』と感じ、その腹積もりを決めたのならば、上昇志向に基づき邁進しなくてはいけない。そこには、真剣に取り組めば取り組むほど、はじめには想像もしていなかった何重もの高い壁が立ちはだかるものだ。逆説的に、そうでなければ、まだ自分は“真剣に”というフェーズに達していないと判断できるかもしれない。勉強でも部活でも習い事でもどんなことでも、真剣に上を目指すならば、いつか必ずぶつかる壁がやってくることを心に留めてほしい。