『基本があれば1を100にすることだってできる』これは日本サッカー界のレジェンドである中田英寿氏の言葉であるが、スポーツに限らず勉強や芸術などの領域でも基本無くして成功はないと思う。
勉強でもスポーツでも試験や試合が近くなると、どうしても目の前の試験や試合を考えて、基本的な内容よりも実戦的な内容が多くなる。実戦的な内容自体は悪いことではないが、ここで注意すべきは現状の自分ではその実戦的な内容に耐えうる基礎力が身についているかを常に考えることだろう。
基礎基本・標準・発展など様々な難易度の分類方法があるが、これらは不連続なものではなく、常に連続性がある。つまり、基礎基本から発展問題まではグラデーションがあり、どのようなグラデーションをかけてステップアップするかは一人ひとりの置かれた状況によって個別に対策を立てるべきだ。
極端な例では、教科書レベルを終えたばかりの人が東大や京大、医学部などの入試問題を解いてもあまり効果的な学習にならないのは想像に難くないだろう。しかしながら実際にはこれに類するような勉強法を組んでしまっている人が一定数いる。一番非効率で結果の出ない勉強法は、基礎基本ができていないのにとにかく応用問題ばかりを解くやり方である。特に受験生の気持ちとして理解できなくはないが、このやり方ではどれだけ勉強しても学力を高め安定的に点数を取ることはできず、結果、砂上の楼閣になる。
『基本があれば1を100にすることだってできる』という言葉の裏を返せば、『基本の1がなければ100にはならない』ということであり、受験的にもこの考え方は正しいと言える。基本ができていない状態での応用問題の演習では、身についた学力や知識がスカスカになる。よって、受験生であれば夏までに基礎基本を固めて、秋からの実戦的な対策に備えるスケジュールで学習を進めていきたい。
まもなく本格的な夏になる。多くの高3生は高体連も終わり気持ち的にも本格的な受験モードへ突入する。最終的な合否を分けるのは、どれだけ早く基礎基本を固め、次のステップに移れたかということにある。必ずしも焦る必要はないが、急ぐ必要はあるだろう。