共通テスト本番まで3ヶ月を切った。共通テストは時間との勝負であり、常に時間を意識して問題を解き続けなくてはならない。模擬試験とは全く異なる独特の緊張感に包まれ、精神的にもいつもと違う状態で「いつも通りやる」ことは非常に難しいのだ。
共通テストには魔物が存在する。毎年この魔物に何万人もの受験生が苦杯をなめさせられる。共通テストは二日間で詰込み型の試験が行われるわけだが、特に試験前半でこの魔物に出会うと後半に大きな心理的負荷をかけられる。平たく言えば、前半に失敗したせいで以降の試験で精神状態を保てず自滅する受験生が多数出現する。
現実的にすべての教科で予想通りの点数あるいは予想以上の点数を取り続けることは不可能である。ごくたまにそのような人がいるかもしれないが、それは全体の1割未満であり一般的ではないので、ここではそのような非常にまれな受験生は除外して考える。たいていは上手くいく教科と失敗する教科が半々もしくは失敗する教科が半分以上かもしれない。「模擬試験では9割を切ったことがないから本番でも9割は絶対に取れるだろう」、そのように考えていても、実際はそう上手くいかないことが多々あるのである。
このような場合、上手くいかないこと(≒精神状態が普通でないこと)を前提に作戦を立てておくべきである。つまり、万が一予想もしない場面で鉛筆が止まっても「想定内」の事象として、そのような場面に出くわしたらどうすべきかを事前に考えておくべきである。上記の例のように「9割は手堅い」と思っていても上手くいかないときに「8.5割を確実に取りに行く」というマインドに瞬時に切り替える準備を直前期の演習で訓練しておくべきだろう。
なぜこのような提案をするのか。それは9割取れないと分かった瞬間に全身がフリーズし思考も停止する受験生や、過度にヒートアップして9割に固執するあまりにその問題に心が捕らわれ結果7割台まで撃沈する受験生を毎年多く見ているからである。そのために、ときには「ここまで問題を解いたら残りは解くのをやめる」という冷静な判断(=英断)を求められる瞬間があるのだ。
この提案は決して「困ったらすぐにすべて諦めなさい」というのではなく、目標の点数だけに固執しないで全体を広く見る習慣をつけてほしいという意味である。受験生は試験に熱中するあまり全体を俯瞰することが苦手である。私もかつてはそうだった。しかし、結果的に全体を俯瞰して合計点を最大化することこそが受験の合否に直結し、決して自分が意固地になって解いた問題の正誤が合否に直結するわけではないのである。
「いつも通りにやる」「いつも通りの点数を取る」ことは決して簡単なことではない。しかしながらその事態を想定して訓練を積むことで限りなく意識的に“いつも通りの自分”になることは可能である。これは誰しもが反復練習を行えば獲得できる受験テクニックである。このテクニックは、100点は無理でも100%を出し切るために必須のスキルである。
本番では想像もできない場面を経験する。それを想定内として日々の学習に取り組んでいこう。